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攻めの調整でサービス開発を成功に導くディレクション部、人材育成は現場を当たることから

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 リクルートグループのIT専門集団、リクルートテクノロジーズ。連結売上高1兆8000億円超という巨大グループ内において大規模開発プロジェクトを手がけるほか、ITやネットマーケティングに関わるソリューションを提供している。同社には、リクルートグループ各事業会社に出向き、システム開発を伴う企画・プロジェクトの成功を担うディレクターを集めた専門部署(ディレクション部)があるという。彼らはミッションをどう遂行しているのか、またSEが担うことも多いプロジェクトマネージャーとはどの点が異なるのか。さらにその人材育成は? リクルートテクノロジーズ ITマネジメント本部 RMPディレクション部 シニアマネージャーの土井浩司氏に話を聞いた。

黒子だが裁量を与えられやりがいも大きい

――RMPディレクション部の業務内容を教えてくださいますか?

リクルートマーケティングパートナーズ(RMP)[1]に対して、ITが関わる意思決定や、プロジェクトを動かしていくことが主な業務です。事業会社・事業領域によって異なる部分もありますが、我々ディレクション部は、複数のステークホルダーを動かす仕事が基本なので、コアなところでいうとプロジェクトマネジメントを担当することが多いです。時に開発に閉じないような案件もあれば、マスプロモーションのプロジェクトマネジメントをすることもあります。

――開発に閉じないというのがユニークですね。ディレクターを集めて1つの組織にしているのは、どんな狙いがあるのでしょうか。

リクルートグループには複数の事業会社がありますが、ディレクターが1つの組織に集まっていることで、事業会社によって同じことと違うことを比較できるんです。お客様のセグメントを比較したときに、同じような課題感があって同じ打ち手を使えることもあれば、そうではなく業界独特の課題で個別に打ち手を考えなければならないこともあります。横で見ているからこそ、その論点がわかるようになってくる。ここに、まとまっていることの価値があると考えています。

土井 浩司氏
土井 浩司(どい・こうじ)氏
株式会社リクルートテクノロジーズ ITマネジメント本部 RMPディレクション部 シニアマネージャー
2010年リクルートに新卒入社。スタディサプリ(旧 受験サプリ・勉強サプリ)の新規事業開発や、リクナビといった基幹サービスの開発を担当。現在はRMPディレクション部において、ITとビジネスの双方の観点から最適なIT投資の在り方を設計、最適な手法や体制で実現することで事業成長に貢献するミッションを担う。2017年4月より現職。

――ディレクターの方は、各事業会社の中でお仕事をされているのですか?

そうですね。基本は事業会社の現場にいます。リクルートテクノロジーズの部長が、リクルートマーケティングパートナーズでディレクションを担当しつつネットサービスチームの部長も兼ねている、そんなケースもあります。また、マネージャーや部長クラスで、プロジェクトやプログラム(同社で複数のプロジェクトを束ねたもののこと)のマネジメントをしている人間もいれば、SEのような開発のマネジメントに近いところを担当しているメンバーもいます。

――「SEのような」といっても、いわゆるSIerのSE業務とは異なるのですよね?

似ているところもありますが、「何をやるか」という、事業の内容に提案や意見をしていく点がSIerさんの仕事と大きく異なります。単純につなぐだけでなく、組織成果を最大化するために、事業会社の人間と調整や交渉をバチバチやることもあります。

SIerさんは仕事を作るということが大事だと思いますので、案件が発生しそうならとにかくプロジェクトを組もうとか、開発しようとかいう発想になりがちと思いますが、我々はそうした配慮をする必要がない。「そこは別に開発いらないでしょ」というジャッジもできてしまうんですよね。

――事業会社のプロダクトオーナーとディレクション部のメンバーとの役割分担はどのように?

プロダクトオーナーが必ずしもITの知識を持っているわけではありません。よりよいITの使い方を調整するためにも、我々のような専門性を持って俯瞰的に考えられる組織が必要だと思います。一方で、事業会社側には機能ごとのスペシャリストがいます。我々は全体の運営に責任を持つと同時に、彼らに「こういうものはやってね」と仕事を振り分ける権限を与えられています。

――プロダクトオーナーから「あれやって、これやって」と依頼されることはないのですか?

あります(笑)。ただ、それらをすべて受けるだけではダメで、予算計画を作るところで会話をしながら、有限なリソースを最適配分できる調整をしていきます。日々の開発の中で何をやるかは、KPI[1]を定めて現場に任せていますけどね。何のためにやっているのか見えなくなるなどの問題が生じたときには、ディレクション部のメンバーがKGI[2]やKPIを分解して、「ここは(やっていることと目標とが)つながってないよね?」といったコミュニケーションをすることもあります。問題があるときに引っ張り出されることが多いので、黒子的なイメージが強いですね。

――プロジェクトの実動部隊にいるのは、リクルートテクノロジーズの方ですか?それとも事業会社の方ですか?

案件によりますが、実動する人たちをアレンジする機能もディレクション部が持っているんです。例えば私の場合、リクルートテクノロジーズとリクルートマーケティングパートナーズの両社の人格をもって立ち回れているので、新規事業の話が挙がったときには相談をもらって、多数の選択肢の中から体制を考えたりしています。

――選択肢というのは?

内製するのか、外注するのか。内製するなら、リクルートマーケティングパートナーズのエンジニアと進めていくのか、リクルートテクノロジーズのエンジニアと進めていくのか、あるいはリクルートテクノロジーズのベトナムにいるオフショア部隊と進めていくのか、パートナーに常駐で入ってもらうのか。

最近ではSoEやSoRといった話[4]がありますが、開発の体制だけでなく、「このサービスをする上で必要なシステム構成要素は何で、それならどういう体制や進め方が良くて、だからここを選んだほうがいいんじゃないか」といった仕組みやプロセスを考えるのも我々の仕事です。目指す役割としてはCIOですね。

――かなり裁量が大きいのですね。やりがいが大きそうです。

たくさんのステークホルダーとの調整が求められるシーンも多いので、若手は最初のうちはやりがいを感じにくいところはあるかもしれませんけどね。また、いろいろな仕事が並行してどんどん進んでいく中で、それらをいかにさばくかが醍醐味。言われたことをやるだけの受け身の人ではつらいと思います。

ある程度、事業のことがわかってきて、自分で「あぁしたい、こうしたい」という思いや意志を出せるようになると、この仕事はおもしろくなってきます。ディレクション部では「これをやるべき」と思ったら、自分から案件を作りに行くことすらあります。例えば、営業支援系の案件をやりたいなら、営業企画と一緒に動いて、営業部長に予算を取りに行って、開発までワンストップでやります。非常にやりがいを感じますね。

もちろん、誰でもいきなりそんなふうに立ち回れるわけではありません。それに、我々は物事がうまくいっているときに目立たず、失敗したときに矢面に立つことが多い。システムや事業を勉強する期間の若手ディレクターなどは、余計にしんどいと思いますよ。ゴールを決めているのはどうしても内製(事業会社)のエンジニアのように見えますから、いかに重要なポジションであっても自分の仕事はなかなか脚光を浴びません。この点は難しいですね。

[1]: 学習・進路決定支援サービス「スタディサプリ」や、中古車購入サービス「カーセンサー」、結婚・挙式・出産支援サービス「ゼクシィ」などを展開するリクルートグループ企業の一社。

[2]: 重要業績評価指標(Key Performance Indicator)。最終目標を定めたKGIを達成する過程において、いつまでに何をすべきかを定め、その達成度合いを見る指標。

[3]: 経営目標達成指標(Key Goal Indicator)。経営上あるいはビジネス戦略上、何をもって目標達成と見なすかを定めた指標。

[4]: SoEはSystem of Engagementの略で、顧客満足度を高めるためのサービス寄りのシステムのこと。一方、SoRはSystem of Recordの略で、データ管理などを行う基盤寄りのシステムのこと。ここの「SoEやSoRといった話」とは、これまでSoRが主な開発対象だったが、これからはSoEに比重を移すべきではないかという議論を指す。

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著者プロフィール

  • 市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

    1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学習書と開発者向けWebメディア両方の経験を活かして「資格Zine」を立ち上げ。「IT人材ラボ」はその拡張版となる。

  • 野本 纏花(ノモト マドカ)

    フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり・セルフブランディングにFacebookを活用しよう』がある。

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