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クライアントの期待を満たすためにコンサルタントが備えるべき3つのベーススキル

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2019/03/14 06:00

 筆者が所属するEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(以下、EYACC)のファイナンスチームでは、国内外の企業のCFOやファイナンス部門が直面する課題に対し、戦略・方針、組織・機能、人、業務プロセス、そして、テクノロジーの観点から、解決に向けた取り組みの支援を提供しています。その日々のクライアントサービス提供(いわゆるプロジェクト)やチーム運営・チームビルディングを通じて筆者が考え、実践している人材育成のポイントをお伝えします。

ファイナンスチームが提供しているサービス

 スキルや成長という話に入る前に、それらを語る上での前提や背景として、筆者の所属するファイナンスチームのメインクライアントである様々な企業のCFOやファイナンス部門が、どのような状況・課題に直面し、何を実現しようとしているのかをお伝えします。また、それらの取り組みに対して、EYACCファイナンスチームがどのような支援サービスを提供しているのかにも触れたいと思います。

 企業におけるCFOまたはファイナンス部門が求められる本質的な役割は、今も昔も変わりません。企業価値の最大化を目指すために、資本の最適配分とリスクのコントロールを実施することです。一方で、近年、法改正や制度改正はもちろんのこと、市場の価値観や社会インフラ・テクノロジーなど外部環境が目まぐるしく変化する中で、ファイナンス組織がより多くのことへの対応を求められるようになっているのも事実です。

 例えば、より精度の高い財務数値の将来予測や、よりスピーディな企業業績の開示、会社を取り巻くリスクへの対応状況の説明、複雑なビジネスを手掛ける上での統制強化を求められます。そして当然ながら、限られた人員でそれらに対応しなければならないため、それらを実現するためのテクノロジーの活用も自然と求められます。

 こうした状況や課題に対し、我々ファイナンスチームは、CFOやファイナンス部門の方々が、実際に自組織がどこまでの役割・機能を担っていくのか、それをどのようなアプローチで実現していくのか、実現していくための具体的な施策は何なのか、施策を誰がいつどのように実行していくのか、どのようなツールをソリューションとして使うのかを考え、実行していくことを支援しています。

企業課題の構造

 先に述べた課題について、もう少し深掘りしたいと思います。

 企業がコンサルタントへ報酬を払ってでも解決あるいは対応したい課題は、様々な要素が複雑に絡み合い、解決までの道のりがクリアになりづらいものがほとんどです。しかし、課題の中身を分解・整理していくと、図1のような構成要素に分類できます。課題解決に向けては、基本的に上位レイヤーからそれぞれの要素・観点ごとにどうしていきたいのか・どうする必要があるのかを検討し、画(いわゆる“To-Be像”や“Blueprint”)を描く必要があります。

図1:課題の構成要素
図1:課題の構成要素
[画像クリックで拡大表示]

 そして、その要素レイヤーごとに描いた画を実現していくために、何をどうしなければならないのかという施策やアクションプランを立てていくことが求められます。

 最上位レイヤーにある戦略・方針は、会社としてあるいは自組織として何を実現したいのかという、そもそもの目的に近い概念です。一方、組織・機能以下のレイヤーは、その目的を実現するための手段です。そのため、レイヤーごとに課題感があったとしても、それそのものが最終的な課題であることは少なく、戦略や方針として描かれている画の実現に帰結させていく必要があります。

プロジェクトにおけるコンサルタントへの期待値

 では、そうした複雑な課題の解決や対応に向けて、外部のコンサルタントが求められる役割や機能は何でしょうか。細かく挙げ始めるときりがありませんが、これができないとコンサルタントとしてクライアント先に伺う価値がないと筆者が考えるものを2つ挙げたいと思います。

 一つは、複雑な課題の全体像を構造的に整理・見える化し、その課題の対応に関わるクライアント内のメンバーの間で、状況認識や目線を合わせられるようにすることです。

 課題対応が進まない一つの原因として、対応に当たっているメンバーの間で、課題そのものや対応方針の擦り合わせができていないことが挙げられます。こうした状況に対しては、関与メンバーやステークホルダー間で、課題に対する前提や論点を共有し、彼らが可能な限り同じ目線に立って議論できるようにお膳立てすることが必要となります。これは、第三者として客観性を持って関与することの意味にも大きくつながります。

 もう一つは、課題解決に向けた議論の出発点となる仮説案を提起し、その後、案をブラッシュアップしていくことです。

 課題対応に当たっているクライアントメンバーは、コンサルタントが関与する前から、あらゆる観点で課題について考えを巡らせているケースがほとんどです。それにもかかわらず、そこから先になかなか進まないのは、多くの場合、議論の場が毎回単なる意見交換で終わっているためです。実はそのような場で出される意見の中にも、非常に精度の高い(結論に近い)仮説案が混じっているものです。ただ、仮説が仮説として共有されていないため、単なる意見として流されてしまっているのです。そうすると、いつまでも同じ議論を繰り返すという事態に陥ります。

 このような事態を打開するためには、限られた情報しかない中でも、議論のスタートポイントとなる仮説案の提起を、勇気を持って行う必要があります。勇気を持つというのは、仮説が外れることを恐れないということです。仮説は当然外れます。なぜならば、プロジェクトスタートの段階では、コンサルタントはクライアントに対して圧倒的に情報量が不足しているからです。それでも仮説案を提起して、何が外れているのか、あるいは何がクライアントメンバーの中で不明瞭となっているのかを特定し、その部分を議論していくための論点を抽出して、議論を積み上げていく必要があります。

 これら2つのことがプロジェクトで常にできるようになってくると、クライアントだけでは進められなかった検討が進むようになり、施策を実施するところまでたどり着くことができて、クライアントからも満足が得られるようになります。

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著者プロフィール

  • 片渕 裕介(カタフチ ユウスケ)

    EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 ファイナンス シニアマネージャー。新卒で国内IT系ベンチャー企業に入社。経理財務・経営企画業務に従事し、グループ予算策定、投資管理、業績管理システムの導入などを経験。その後BIG4系コンサルティングファームを経てEYACCへジョインし、外資系エンタ―テイメント、外資系製薬、国内大手商社などに対するファイナンス領域を中心とした業務改善・チェンジマネジメントプロジェクトをリード。『デジタルCFO』(東洋経済新報社、2017年)の執筆なども担当。

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