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今年も10月より開催、全国の大学生が参加するハッカソン「JPHACKS」で将来のイノベーター発掘を目指す――東京大学 江崎浩氏、ノキア 植松幸生氏

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 今年も10月から11月にかけて、学生を対象とするハックイベント「JPHACKS(ジャパンハックス)」が開催される。全国7会場で予選を行い、勝ち残った15チームが東京での決勝に挑むこのイベントは、どのような思いで開催されているのか。また、参加する学生に期待するものは何か。JPHACKS組織委員長の江﨑浩氏と、JPHACKS審査委員長の植松幸生氏に聞いた。

ソースコードもしっかり審査

――JPHACKSはどんなイベントなのでしょうか。

江崎浩氏(以下、江﨑):日本全国の学生が参加するハッカソンイベントです。今年で6年目を迎えます。120名くらいの参加者でスタートしたのものが、今では350人を超えるまでに成長しました。スポンサーの皆さんと一緒になって、ハックが好きな学生を育てようというのが開催の大きな目的です。これからのイノベーターになるような学生をみんなで発掘し、育てていくのです。

 JPHACKSはまず、予選である「Hack Day」から始まります。Hack Dayは10月に全国7会場(札幌・仙台・東京・名古屋・神戸・福岡・沖縄)で2日間にわたって開催され、会場で実際にプロダクトを作成します。アイデアソンのようにアイデアだけで終わってしまうものではありません。事前に準備して臨むこともできますが、審査は、予選が始まったときからプロダクトがどれくらい成長したかという点に重きを置いて行われます。つまり事前に準備をしても、伸びしろが少ないものは評価が低いのです。

 もちろん、プロダクトの完成度は重要な審査のポイントです。プロダクトに実装されているソースコードもしっかり審査します。それ以外にも、Slackを使って行われるチーム内のコミュニケーションを見ており、どのように活動しているかも非常に重要な評価対象としています。

 Hack Dayに参加したうちの15チームが、11月に東京大学で開催される決勝戦「Award Day」に進出できます。

江崎 浩氏
江崎 浩(えさき ひろし)氏
東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授。
1987年九州大学工学部電子工学科修士課程了。同年4月(株)東芝入社。1998年10月東京大学助教授、2005年4月より現職。WIDEプロジェクト代表、ISOC(Internet Society)理事(Board of Trustee)、東大グリーンICTプロジェクト代表、日本データセンター協会 理事/運営委員会委員長。工学博士(東京大学)。

植松幸生氏(以下、植松):Award Dayに進出するチームを決めるための審査は2段階で行っています。オーディエンスによる審査と、審査員による審査です。Hack Dayの最後には、作成したプロダクトを各チームが90秒間のピッチでアピールします。オーディエンスの審査は、Hack Dayの参加者を含め、会場にいる人全員がそのピッチを聞いて投票するものです。つまり、90秒間のピッチで会場にいる人の心をつかんだチームが勝ちとなります。その後、江崎先生が述べたようなポイントで審査員がオーディエンスに評価された上位チームのプロダクトを審査し、Award Dayに進出する15チームを決定します。

江崎:Award Dayに進んだチームは、その日までにプロダクトの完成度をさらに高めていくことになります。そして当日、作成したプロダクトの意義や出来映えなどを8分間のプレゼンテーションで審査員やオーディエンスに伝えます。

植松:プレゼンテーションとは別に、3年前からデモスペースを設けており、Award Day進出者はそのスペースでもデモを行います。そこでは、スポンサー企業やメディアなどの有識者からフィードバックを受けることができ、成長の機会となっています。

――JPHACKSの「ハック」とは、世の中を良い方向へ変えるという意味ですよね。

江﨑:そうです。とりわけ、ソフトウェアに興味があり、ハードウェアにも興味があるという、ギークな意味でのハックということです。もう1つ、チームとして決めたものをきちんと作っていくという意味では、個人ではなくチームとしてハックしていくところを目指してほしいと思っています。

――世の中を変えるという意味では、プログラミングや工作を行う人だけでなく、プロダクトを企画する人やUI/UXをデザインする人なども、JPHACKSの参加者に該当するように思えます。

江﨑:プログラムをたくさんは書けないけれども、アイデアを作ったりリーダーシップを取ったりする人がチームを引っ張り、上位の賞を獲得したチームは過去にあります。そのチームのリーダーは女性だったのですが、女性の視点で出てきたアイデアを男性が作り込んでいきました。他にも、電子工作を駆使することでダンサーやストリートパフォーマーに新しい表現の方法を提供したり、障がい者を助けるための電子杖を作ったりした例があります。一方で、昨年度の優勝チームは、課題に思っていた教育向けLinuxターミナルを作ったチームでした。

植松:最近のハッカソンではハードウェアを使ったプロダクトが増え、純粋なソフトウェアが少なくなってきています。審査員の目線からするとそこが少し寂しいところで、「マニアックなソフトウェア、出て来いよ」という気持ちもあります。今年はそこを強化していきたいと思います。

植松 幸生氏
植松 幸生(うえまつ ゆきお)氏
ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社 AVA Analytics エキスパートリーダー。
2003年東京理科大学修士課程修了、大手通信会社に入社。検索エンジンの研究開発に従事。同社データサイエンスチームリーダを歴任後,現職。データ分析リーダとしてAIを活用した異常検知システムの開発に従事。米国留学中にハッカソンの楽しさにふれ、2014年からJPHACKS開催に携わる。博士(工学)。

――チームは何名で組むことが多いのですか。

江﨑:だいたい5~6名くらいで、小さいチームで2~3名です。1人で来た者同士で即席チームを組む人もいます。

――会場では参加者に、JPHACKSのスポンサー企業から有償製品やAPIなどが提供されます。どのチームも当日それらを見て、何を作るのか考えるのでしょうか。

江﨑:以前、NECさんが画像認識APIを提供してくれたことがあるのですが、画像認識に関してはそのツールを使えるという条件でアイデアを考えたりします。他にも、LINEさんが提供してくださったスマートスピーカーを使ってアプリを開発した例もあります。一方で、先ほども述べたとおり、事前に少し作っているチームもありますし、先にアイデアを考えてくるチームもあります。2日間をかけてそれをブラッシュアップしていくというパターンですね。

植松:その場合もあくまで差分を審査します。事前に考えてきたものや、研究室から持ち込んだものについては「これは持ち込みました」と宣言をしていただいた上で、「この中で何を頑張ったのか」をGitHubのアップデートを確認して見る形になります。

 なお、審査員はさまざまな分野の人で構成されています。我々のようなITエンジニア枠のほか、アントレプレナー枠、投資家枠、銀行などのファイナンシャル枠、JPHACKSのOB・OG枠などです。ある意味、バランスを取りながら審査することを心がけています。

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著者プロフィール

  • 八鍬 悟志(ヤクワ サトシ)

    都内の出版社に12年勤めたのちフリーランス・ライターへ。得意ジャンルは労働者の実像に迫るルポルタージュと国内外の紀行文。特にヒンドゥ教の修行僧であるサドゥを追いかけたルポルタージュと、八重山諸島を描いた紀行文には定評がある。20年かけて日本百名山の制覇を目指しているほか、国内外を走るサイクリストとしての一面も。

  • 市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

    1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学習書と開発者向けWebメディア両方の経験を活かして「資格Zine」を立ち上げ。2017年7月にその拡張版として「IT人材ラボ」をスタートさせた。

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連載:シリーズ「JPHACKS」
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2019/06/27 06:00 /article/detail/1716
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