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中途入社者の活躍に必要なのは「人事によるRJP」で高まる心理的安全性と「上司による面談」が生み出す有意味感

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2020/04/28 06:00

 激しさを増す一方のIT業界の人材争奪戦。しかし、入社後半年以内に辞めてしまう人が多いのも現実。中途入社者を定着させるために、企業はどのような対策をすればよいのでしょうか。本記事では、リクルートキャリアが実施した「中途入社後活躍調査(2018年~2019年)」から見えてきた、中途入社者定着の課題および対策を、前後編でご紹介します。前編では「オンボーディング」のプロセスと重要なポイントについてお伝えしました。後編では「人事によるRJP」「上司による面談」が機能せずに中途入社者が活躍できなかった事例を交え、人事と上司のサポートのあり方をさらに詳しく解説します。

本記事の前編はこちらから。

中途入社後活躍調査(2018年~2019年)概要

中途入社後活躍調査 第1弾&第3弾
  • 実施期間:2018年2月26日(月)~2月28日(水)および3月28日(水)~3月30日(金)
  • 調査対象:過去5年以内に従業員数300名以上の企業に正社員・正職員として中途入社された方
  • 回答数 :5378名
  • 調査方式:Webを使用したアンケート
中途入社後活躍調査 第2弾
  • 実施期間:2019年2月26日(火)~3月4日(月)
  • 調査対象:過去1~3年以内に従業員数300名以上の企業に正社員・正職員として転職された方
  • 回答数 :946名
  • 調査方式:Webを使用したアンケート
「中途入社後活躍支援メソッド」ブックレット

日本語版(PDF)英語版(PDF)

「こんなはずじゃなかった」を防止するための、人事と上司の働きかけとは

 中途入社者に実際に起きた、入社後の「こんなはずじゃなかった」ケースを見てみましょう。前編で、中途入社者の「離職意向度DOWN」に効果があるとお伝えした「人事によるRJP(=リアリスティック・ジョブ・プレビュー。仕事や会社について、リアルな情報を事前に開示する)」。このRJPが不足していた結果、中途入社者が活躍できなかった事例です。

<事例-1>
入社前の「人事によるRJP」の不足が招いた不安と不満

 これまで従事してきた領域の経験を活かすつもりで、熱意を持って転職してきたエンジニアのAさん(20代)。しかし、転職先で配属されたのはまったく異なる領域を担当する部門でした。専門家ではない人事から見れば、どちらも大差ないと捉えたのかもしれませんが、当のAさんにとってはまったく違うもの。ゼロから勉強しなければならない未知の領域です。

 入社後に配属を知らされたAさんは、困惑しながらも受け入れ、頑張って勉強しました。しかし、慣れない領域ですので、自分がイメージしていたようなアウトプットができません。数か月も経つと、「自分は周囲から認められていない」と感じるようになりました。

 同僚から「即戦力として入社してきたはずなのに期待外れ」という視線を受け、「いやいや、自分は未経験のことを一からやっているんだ!」と叫びたい気持ちだったというAさん。しかし、それをぐっとこらえ続けていました。「上司はきっとわかってくれている。僕の成長を促すために、あえて違う領域を任せてくれているに違いない」――そう考えるようにしていたのです。実際には、上司や人事の真意はわかりません。Aさんはそれを聞いて確かめようとすることもなく、不満を抑え込んでいました。

 そんな心理状態ですから、先輩から指導やフィードバックをされても、「できないのは自分のせいではない」と素直に受け入れることができません。結果、入社後1年以上経っても、入社時に期待されたパフォーマンスを発揮しないままでした。

 このケースでは、入社前に人事担当者から、会社都合で本人の希望に沿わない配属となる可能性があるという「現実」を伝えておくべきでした。

 Aさんの転職目的は「培った知見・スキルを活かし、キャリアアップする」こと。Aさんは自分の希望が転職先の会社に受け入れられたものと入社するまで信じきっていました。入社してようやく自分の希望に沿わない配属であることを知り、Aさんは「はしごを外された」と感じたそうです。

 人事がAさんに対して、本人希望に沿わない配属もありうる、しかし上司や同僚がしっかりサポートするという「現実」を入社前に伝えていたらどうだったでしょうか。Aさんは入社を辞退していたかもしれませんが、「現実」を受け入れた上で入社し、目の前の仕事に打ち込むことができていたのではないでしょうか。

 まず人事が本人の目的・意思を尊重すること。それが、中途入社者のハイパフォーマンスと定着につながるのです。

 中途入社後活躍調査においては、人事担当者が「転職目的について聞いてくれた」「必要な情報を得たかを確認してくれた」「既存社員の話を聞きたいかを確認してくれた」という中途入社者は、入社後にパフォーマンスを発揮している事実が見てとれます。これは、中途入社者に「大切にされている感」が醸成され、心理的安全性を得られたからだと考えられます。

入社前の中途入社者と人事のコミュニケーションの有無
入社前の中途入社者と人事のコミュニケーションの有無
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入社前後の人事とのコミュニケーション有無による、中途入社者におけるパフォーマンス発揮者の割合
入社前後の人事とのコミュニケーション有無による、中途入社者におけるパフォーマンス発揮者の割合
[画像クリックで拡大表示]

 入社後にパフォーマンスを発揮した中途入社者に対して、入社前に人事が実施しているRJPは「3C」(Clear・Choice・Communication)から構成されます。この3Cはパフォーマンス向上だけでなく「働く喜びの向上」にもつながっているという調査結果があります。

<RJPの「3C」>
  • ①転職目的の明確化(Clear)⇒転職目的について聞く
  • ②企業選択の不安解消(Choice)⇒入社後に想定される疑問や不安を解消する情報を隠すことなく開示する
  • ③意思決定に寄り添う対話(Communication)⇒入社を検討する上で十分な情報を得たか確認する

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。



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著者プロフィール

  • 高森 純(タカモリ ジュン)

    株式会社リクルートキャリア 事業推進室 インキュベーション部 リファラルグループ マネジャー。外資系コンサルティング会社を経て2012年にリクルートキャリアに入社。グローバル人事、ピープルアナリティクス、入社後活躍等の新領域の事業開発に従事。現在はリファラル採用支援サービス『GLOVER Refer(グラバー・リファー)』の責任者を務める。

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連載:「個」の力を最大限に引き出すマネジメント「中途入社者活躍支援メソッド」
IT人材ラボ
2020/04/28 06:00 /article/detail/2079
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