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社内に人口ピラミッドを作る ―― 翔泳社 久次宗彦さん《後編》

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2017/10/03 06:00

 前回に引き続き、弊社の執行役員、久次宗彦さんの採用面接観を聞いています。後編では普通の会社と変な人について、採用の失敗とは何か、そして、“IT系メディア出版社“というよくわからない弊社の採用の難しさなどについてうかがいました。

◆本記事の前編はこちら

会社のジェネリック化と、“変な奴が入ってこない”問題

久次宗彦さん
株式会社翔泳社 執行役員 久次宗彦さん

小泉 ここ数年で翔泳社の採用ってすごく変わりましたよね。前は新卒を採っていなかったじゃないですか。どちらかというと、欠員が出たら補充、みたいなイメージ。でも今は、普通の会社みたい……っていう言い方もおかしいけど、普通の会社みたいになってきたじゃないですか。新人さんも違う、明らかに前とは違うんですよ!

久次 それはね、まず僕らが年を取ってきたということですね(笑)。誰でも年を取れば若者は新鮮に見えます。そういうジェネレーションギャップがあって。それから、採用のテーマが自然に変わってきたっていうか、今まで翔泳社にいない人、いないけど、なおかつフィットしそうな人をとろうっていうざっくりした方針もある。あと紙だけでなく、Web事業も成長しているから、今の激変するメディア環境でどうコンテンツをアウトプットするかについて、肌感覚でチャレンジできる若い人ももっと必要です。新卒採用もやってなかったわけではなく、細々とはやっていたのですが、2年前からは、いわゆる世間一般の新卒採用スキームにのっとってやりはじめました。普通に会社説明会とかグループ面接とか。それまでは一切やってなかった。

小泉 それはなにか理由があったんですか?

久次 やってなかった理由は特にないと思います。ちなみに、新卒について言えば、それまでは秋口とかに、リクナビとかに新卒・第二新卒募集を出して、応募してきた人を採っていたんだけど、なんかね、明らかに応募者の量や質が以前とは違う気がしたんですよ。もはや売り手市場になってましたし。で、新卒採用にも協力してくれている原さん(編集部注:執行役員)とかと話していて、結局、学生さんは翔泳社という会社があること自体知らない、ということに気が付いた。

小泉 ああ、確かに。ん? ショーエーシャ? 集英社? みたいなね。

久次 ある種、業界というか、社会人がお客様の会社だから、学生に対して広報機能がまったく機能していなかった。だからまず来るきっかけすらない。牧歌的に待っているだけじゃなくて、これはちゃんとやらないとダメだということになって。

小泉 ちゃんとやる。

久次 結果、今、20代が20人近くいるんです。一時期は2~3人しかいなかった。30代も増えてきてて。

小泉 研修とか、昔はなかったですもんね。

久次 うん。それも話自体は別のところで進んでたこともあり、新人だけでなく社員研修もぜひやりましょうと、やることにした。まあ、会社の普通化ですね。普遍化。ジェネリック化(笑)。

小泉 ここ数年風通しがよくなったな、よい感じに変わってきていていい感じだなと思う反面、突出した個性を持つ人が入りづらくなるのではないかとか思ってしまうんですけど、そういうことはないんですかね? 良くも悪くも変な奴が入って来なくなる。

久次 変な奴の定義にもよるけど、言いたいことはなんとなくわかる。えっとね、あえてのっかって答えますけど、応募者みんなに会っている感じだと、まず、面接の段階ではそんなに変な奴は来ない(笑)。皆さん、すごくキチンとしているイメージです。

小泉 なるほど。

久次 書類選考もあるわけなので。あとフォローしとくと、今、社内にいる人たちは十分個性的だと思うし、まずそもそもそれ以上の「ずば抜けて変な奴」が今の現場に必要なのか、っていう話もある。会社として責任もって扱えるのかって話もあるし。結局、会社のパブリックイメージに相応な人が来ているだけなのだと思います。

小泉 変な奴らはどこに行ったんでしょう?

久次 どこに行ったんだろう。たぶん、出版とかに興味がないんじゃないかな。別のところに行っているような気がする。Web系のベンチャーとか。ちなみに僕が入ったころの翔泳社は一応出版ベンチャーだった。まだ創業10年目くらいで、どうなるかわからない40~50人の会社だった。

小泉 ちなみに、久次さんの時の面接はどんな感じだったんですか?

久次 当時の社長で創業者の長廻さん(編集部注:現バジリコ株式会社代表取締役社長)。

小泉 長廻さんとワン・オン・ワン?

久次 長廻さんとワン・オン・ワン。けっこう怖かった。これは記憶違いかもしれないけど、あくまで僕の記憶では、自己紹介した後、質問を待ってたら、5分くらい沈黙で履歴書読まれながら、何も質問されずじっと顔を凝視された。

小泉 凝視……つらがまえを見ている感じでしょうか。それは怖いですね。

久次 「なんでやねん」って思ったけど、編集者になりたかったので、「未経験ですけど、御社の本も読んでますし、Macも使えるから編集くらいできるんで!」とか言って(編集部注:1994年当時の翔泳社は書籍編集にMacDTPを導入していた)。

小泉 それは……今の翔泳社の面接では……。

久次 落ちてたかも。課題面接もなかったし。

小泉 そうか、変な人は来なくなったんですね。

久次 来なくなったというよりは、書類選考もあるから、面接に至るまでにいろいろハードルができちゃった、ということです。昔は電話してアポとって、履歴書持って面接に乗り込んで行く、みたいなことだったから。面接前の書類選考もなかったような気がする。

小泉 先ほど、翔泳社もかつては出版ベンチャーだったとおっしゃいましたが、やっぱり会社の成熟度と変な人率には何かしら相関関係があるんでしょうか。

久次 変な人にこだわるね(笑)。たしかに、会社が100人くらいの規模でそれなりに成熟してきたというのもある。だけど、本当に変な人が入社して来ていないのかっていうとそうでもないかもしれないというのも一方で思ってて。

小泉 それはどういう意味でしょう?

久次 会社がそれなりに成熟し、世の中もジェネレーション的に全体がサニタイズ(無害化)されていく中で、型からはみ出た人もいるんだけど、それが見えづらくなってきているというか。

小泉 サニタイズされていく……。

久次 勝手な仮説ですが、世代ごとの変人、独特な考え方を持つ人の数というか割合は結構一緒だと思っていて。ただ、それが世代間ですごく見えづらくなってきている。かなり深いところまで付き合わないと変な奴だっていうのがわからないってなっているのかも。でも、それが今の処世術のような気がするんですよ。評価社会の生存戦略じゃないですか。バレたらヤバいとか、空気読めないとか茶化されたり、会社員としてはそれらを表に出さず社会性とうまく折り合いを付けながら変人でいること、すごく大変だと思いますが(笑)。

小泉 たとえ普段はできていたとしても、面接で空気を読みつつ変人らしさの魅力をアピールするとかもう、どんな無理ゲーだと。

久次 むちゃくちゃハイリスクじゃない、そんなの。だから面接だと割と普通にしているんだと思う。そうすると、普通の子だね、みたいな評価になるけど。

小泉 入ったらわからないぞ、と。

久次 個性の出し方が変わってきているんじゃないかなと。個性の現れ、表現の仕方が違っているだけなんだと思いますね。


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