Shoeisha Technology Media

IT人材ラボ

記事種別から探す

未経験者をエンジニアとして新卒採用する勇気の必要性

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Dento[著]
2017/11/09 08:00

 天気の変化が激しいこのごろ、いかがお過ごしだろうか。「20代〜30代のキャリアを考えるブログ」を運営しているDentoだ。多くの企業、特にWeb業界はエンジニアの確保に苦しんでいると思う。基本的には理系人材へアプローチしつつ、インターンシップを通じて簡単なコーディングやWebサービス作成ができる人を採用している、というところがほとんどではなかろうか。一方で、「未経験者」の採用はハードルが高く、あまり取り組めていないのが実情かもしれない。そこで今回は、未経験者をエンジニアとして採用することに関して提案していきたい。

著者のDento氏が運営する「20代〜30代のキャリアを考えるブログ」もあわせてご覧ください

なぜ未経験者を採用するのを躊躇しているか

 未経験者の採用を躊躇している理由には、大きく2つあるのではなかろうか。

 1つ目は「教育コストの高さ」だ。未経験だと戦力のあるエンジニアとして現場に入るまで数か月以上かかることも珍しくない。それまでに人件費、書籍代、セミナー代と高いお金がかかる。そして、身についたと思ったら他社に転職してしまったということも珍しくない。

 こうした教育コストの高さは、未経験者採用を躊躇する主な原因になっているだろう。特に入社後は保険代、時にはボーナスも支払いなどが発生し、1円も生み出していない人に払う金額もはねあがってしまう。

 2つ目は「エンジニアという仕事に向いているかわからない」という点だ。エンジニアという仕事を未経験だけどやりたいですという人が、やっぱり向いていませんでしたということになると、採用にかけた時間が無駄になってしまう。そのため、経験のある人を採用するほうが理にかなっているだろう。「やっぱ、オレにはダメでした」と言い残して去るのを見たことがある人もいるのではなかろうか。

 だが、空前のエンジニア不足である現状において、エンジニア採用に関して文句を言ってはいられないだろう。有名なメガベンチャーでも、Webエンジニアに関しては「来てください」というスタンスなので、通常の企業が経験者、特にスキルのある人の獲得合戦で勝つのは難しい。

 そこで、未経験者をどのように採用していったらよいかを提案したい。未経験者の採用は難しいのは承知だが、育成によっては可能性があることを示したい。特に内定者期間にするべきことや、採用にあたってのターゲティングについて、「教育コスト」に着目して述べさせていただく。

教育に潤沢な費用をかけられる企業のエンジニア採用戦略

 NTTデータは、日本の官公庁で使用されるシステムなどに強みを持つ、国内有数のシステムインテグレータ(SI企業)である。同社に採用された学生には、未経験者が少なくない。その他の大手企業でも同様だ。要件定義だけをする人も多いが、実は未経験からコードを書けるようになる人も多くいる。これはひとえに、教育コストを十分にかけられるためだ。現場にすぐ出さなくても、じっくりと育てていればいつかは使い物になるという発想である。

 また、NTTデータでは、福利厚生や給与といった待遇が厚く、多くの優秀な学生を惹きつけていることもあって、辞めずに頑張る人がほとんどだ。上位大学の学生でかつ、辞めるインセンティブが働かず、教育コストにお金を割くことのできる大手企業の場合、NTTデータのような戦略は有効であると考えられる。

 だが、このような戦略を採れる企業は数が限られる。このような戦略が採れる企業には、日本の未来を支えるエンジニアを育成していってほしい。

最低限の教育コストはかけられる企業のエンジニア採用戦略

 未経験者をエンジニアとして採用するときにかかる教育コストには、たとえば、内定者期間に読ませる書籍や受講させるプログラミング教室の代金がある。内定者期間が1年間として、だいたい1人当たり30~40万円程度だ。オンラインのプログラミング教室(ドットインストールなど)を活用すると数万円レベルまで下がるが、オンラインはみんなさぼるのでお勧めしない。ある程度できる人であればプログラミング教室ではなく、会社に貢献する内容の課題を与え、チャレンジさせるほうがモチベーションがより高まる。

 エンジニアは、公認会計士などと違い、取得の難しい資格を取らないと仕事ができないわけではない。また、エンジニアになりたいといって応募してくる学生であれば、ある程度の教育を施せばキャッチアップしてくれるし、中級者になるのもそれほど難しくない。

 私の知る事例として、大学で法律を学んでいた学生をエンジニアとして採用し、教育によって現場で活躍できる人材に育て上げたケースがある。その学生は、所属サークルのホームページ(できあがっているもの)の更新作業をやっていたのだが、プログラミング経験はほとんどなし。ただ、オタク気質なところと学習スピードの高さ、社風に合っていた点が評価されて採用に至った。

 現在はRuby on Railsのほか、iOSやAndroidのアプリ開発もできるエンジニアとして活躍している。その背景には、内定者時代からある程度費用をかけて研修を受けさせたことや、社内のメンター制度が内定者のときからしっかりしていたことがある。教育が、内定時点には未経験者だった学生を、入社直後から戦力として働ける人材にしたのである。

 そのほか、ベンチャー企業では、日系企業が内定を出せない大学3年時から内定を出せるため、学習時間をより多く確保できた事例がある。

戦力になるまで待てる企業の採用戦略

 公認会計士が不足していた時代、会計士試験に合格していなくても監査法人が採用してくれた。また、保険の利率などを設計する「アクチュアリー」という職業でも、資格取得に必要な科目にほとんど合格していない人[1]を、保険会社は正社員として採用してくれる。公認会計士、アクチュアリーともに合格率は10%程度である(年により変動あり)。

 このように、目指していることが明確で、多少の教育費用はかかるが将来の戦力として目途が立つ人材に対しては、青田刈りに近いような形の採用もアリだ。

教育コストをほとんどかけられない企業のエンジニア採用戦略

 教育コストがかけられない場合、新卒を採用すべきではないだろう。ただ、困った社長が、あなたに採用の依頼をしてくるかもしれない。「とにかく採用をしよう!」などと。とはいえ、経験のあるエンジニアはそうそう採用できない。こうした場合、「より高い確度で戦力となりうる人」にアプローチするのがよい。

やはり理系の学生をねらう

 具体的にはプログラミングをしている理系だ。CやR、C++といった言語を使ったプログラミングを授業で行っており、プログラミングの基本を理解している。化学、生物系の学科を除くと、実は理系の学部・学科の多くで、プログラミングによって計算を行う授業が存在する。土木・建築系だと、構造計算を行うときにプログラミングが必要だ。最近では生物系でも一部の学科は、研究の中でプログラミングを行っている。

 こうした学科の学生は専門分野への就職が当たり前で、Web系になじみこそないが、専門分野への就職以外の道はないかと探している学生は一定数いる。やりたいことがないからとりあえず公務員という投げやりな人もいる。そうした学生へのアプローチは正しいし、能力活用の観点で社会貢献にもなる採用だ。彼らは書籍を渡せば、あとはネットでググってキャッチアップをする。

 理系の学生にググる力があるのは、ネットばかり見ているからではなく、論文作成のために「Google Scholar」という論文検索サービス[2]を利用しているからだと思う。研究分野が近いものや必要な情報を英語で取りに行っているので、調べる力が自然と身につく。引っかかる点、気になる点があれば自分で探す。見つけたものを応用し、自分の勉強に生かすサイクルが形成されているのだ。

 プログラミングの学習においても、英語の文献を当たり学習する場面は多々あるだろう。そのため、理系の学生はこの点でもエンジニアに向いている。あとは「あなたはエンジニアに向いている」ということを、いかにして伝えるかだ。学生の母集団形成やアプローチの仕方については詳しく述べたい。

実は文系の学生にもポテンシャルがある

 また、文系に分類される経済学部でも、MATLABなどの計算向けプログラミング言語(以下、計算言語)を使って統計を分析しているゼミが多く存在する。統計を扱っている研究室はプログラミングも最低限できるので、アプローチする対象として悪くはない。

 授業でプログラミングをしているか否かは大きな差なので、学生の獲得を狙っている大学があれば、シラバスを手に入れて授業を調べてみよう。それくらいやると狙うターゲット、手法が明確になるだろう。

 計算言語を使う必要のある修士論文を書いていたある大学院生は、論文作成が進むにつれプログラミングスキルも高まっていった。内定者時代にはプログラミング研修をほとんど受けなかったが、入社後、現場に放り投げられた後も持ち前のストレス耐性とリサーチ能力で、Web系のプログラミング言語をマスターしていた。

 ただし、これは「ストレス耐性のある」学生じゃないとあてはまらないケースである。採用時にストレス耐性の有無を見極める必要があるが、そもそもいい方針とは思わない。

 研修費用が潤沢にあるメガベンチャーでも、一時期、計算言語しか扱ったことのない理系学生を採用していた[3]。5~6年経ち、彼らはその企業の大きなプロジェクトを担い活躍している。

未経験でも採用する勇気を

 以上、未経験者でもエンジニアとして雇う可能性について言及した。採用が難しいという時代においては、勇気と育成の2つの観点から採用を考えてほしい。自己PRが下手でも数的処理やパズルが非常に得意な学生もいる。

 たとえば、東京大学で物理系を専攻している学生などは、外資系や商社の採用面談ではうまく話せないが、ペーパーでは圧倒的に強い。それでも研究室推薦を使わなければ、大手企業には採用されず挫折を感じる人もいる。

 「当社では採れないレベルの学歴だろう」などと思わずに、勝負してほしいとも思う。エンジニアという職業の地位が向上している昨今であり、エンジニアになりたいと密かに思っている隠れエンジニア予備軍がいることを忘れないでいただきたい。

 今日は以上だ。

[1]: アクチュアリーとして働くには、日本アクチュアリー会が実施する資格試験に合格する必要がある

[2]: Google Scholarというサービスでは、先行研究や世界最先端の研究を見ることができる。一般の外部アクセスでは見られる論文が制限されているが、大学は契約を結んでいるため専門分野の論文ならほとんど閲覧可能。

[3]: 現在は、採用人数が減った関係でほとんどやっていない。



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

  • Dento(デント)

    自身の経験を基にトップ校の新卒学生から20代、30代に向けたキャリアアドバイスを数多く実施。キャリア論を発信したブログ「20代~30代のキャリアを考えるブログ」が多くのビジネスパーソンから支持される。
    20代~30代のキャリアを考えるブログ: http://www.careerhigh.jp

バックナンバー

連載:20代~30代のキャリアを考えるブログ 出張版
All contents copyright © 2017 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.0