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新人研修で育むべきはアジャイルに必要なマインドセット―グロースエクスパートナーズ 鈴木雄介氏×カサレアル 山本 薫氏

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 新卒人口が減少していく中で、IT業界の将来を担う若手エンジニアの育成は、最重要課題の1つだ。しかし従来の座学中心の新人研修では、加速度的に変化していくテクノロジーやプロジェクト、市場に対応できるエンジニアを育成できなくなっている。今回は、そうした流れに対応した新しい新人研修にチャレンジしているグロースエクスパートナーズ株式会社 鈴木雄介氏と、同社と共同で新しい新人研修プログラム作成を手がけた株式会社カサレアル 山本 薫氏に、ITエンジニア新人研修の課題と解決のヒントについて語っていただいた。

新しい価値を考え提案できるエンジニアしか生き残れない

――グロースエクスパートナーズでは、自社のITエンジニア新人研修に、今回アジャイルを取り入れた新しいカリキュラムを導入したと聞きました。その狙いと課題についてお聞かせください。

鈴木雄介氏(以下、鈴木):従来の新人教育は、カリキュラムを端から学ぶ詰め込み型が主流でした。そこでは学校のように与えられた課題を、ステップを踏んで習得できるタイプの生徒が評価されました。しかし現在は、自分で課題を考え、顧客や周囲に提案できる力がないと、本当の価値を提供できるエンジニアになれません。そこで新人教育の時点から、そうしたスキルを実現できる研修を行ってみようと考えて、研修教育の専門家であるカサレアルさんに相談しました。

鈴木 雄介氏
鈴木 雄介(すずき ゆうすけ)氏
グロースエクスパートナーズ株式会社 執行役員 アーキテクチャ事業本部長 兼 ビジネスソリューション事業副本部長。
流通系システム子会社、オンラインマーケティングサービス、フリーランスなどを経て現職。エンタープライズ領域のアーキテクト、PMに従事したのち、近年ではクラウド、アジャイルといった潮流を取り込んだシステム開発の啓もう、コンサルティングに注力。日本Javaユーザーグループ会長。
ブログ:http://arclamp.hatenablog.com/
近著:『Cloud First Architecture 設計ガイド』(日経BP社刊、2016年)

――なぜ、これまでの詰め込み教育が通用しなくなったのでしょう。

鈴木:これまでは「こういう機能を作れ」という指示に対して、お決まりの画面配置や遷移に従って作っていれば問題ありませんでした。でも、今はスマホが登場したり、差別化できるユーザビリティが求められたりと、「お決まり」だけでは通用しない。顧客自身も何が正解かよくわからないから、エンジニアは「言われたことを、どう実現するか?」だけでなく、「こうしたらもっと良いのでは?」といった提案をできる必要があります。つまり、顧客と一緒に考えられるエンジニアでないと、これからは通用しないということですね。

山本 薫氏(以下、山本):ひと昔前までは、大規模なシステムを作る際、設計者とプログラマーの責務を明確に分離し、量産体制で取り組むことが一般的でした。そのため、新人には設計書に従ってプログラムを記述できることが求められたのです。しかし、今では、テクノロジーの多様化が進むと同時に、変化のスピードも早くなっており、従来の進め方が通用しなくなっています。むしろ、価値あるサービスを自ら提案し、数あるフレームワークやクラウドサービスなどを活用しながら、いかに提供していくかが求められているのです。今回、グロースエクスパートナーズさんに提案したカリキュラムも、アジャイルという手法を通じて受講者自身が考える時間をできるだけ作るように心がけました。

――カサレアルとしても、確実に需要がある従来型の研修とは大きく異なるカリキュラムをリリースするのは、かなりの挑戦だったのではないでしょうか。

山本:すでにアジャイルに取り組んでいる一部の会社は、いわゆる従来型の新人研修に問題を感じています。一方で、大半の企業は、まだそうした問題に気づいてすらいません。しかも、新人研修のイニシアティブはIT部門ではなく、総務や人事部門が取るケースが多い。このままでは、IT現場の問題意識と新人教育のカリキュラムが乖離していくばかりです。すぐには多くの企業に受け入れられなくとも、このカリキュラムが業界への問題提起となると考え、今回の研修開発にチャレンジしました。

鈴木:現時点では多くの顧客が、アジャイルで作るというスタイルに慣れていません。この状況が変わって顧客がアジャイルの価値に気づいていけば、数年後にはこのカリキュラムへの需要も評価も大きく変わるのではないかと予想しています。

山本 薫氏
山本 薫(やまもと かおる)氏
株式会社カサレアル ラーニングサービス部 プロフェッショナル サービス グループ グループマネージャー。
大学卒業後、独立系システム開発会社へ入社し、電力会社や金融機関などで、設計から実装まで幅広く担当する。その後、技術者教育に従事。2006年より最新の開発技術に適した実践的な研修を提供するカサレアルにて研修講師を務める。現在ではプロフェッショナルサービスグループのマネジャーとしてカサレアルで提供するすべての研修設計に携わっている。

実践型の開発者向け新人研修をグロースエクスパートナーズと共同開発―カサレアル

 カサレアルは、グロースエクスパートナーズと共同で開発した、新人アプリケーション開発者を対象とするセミナー「しっかり実践 新人研修」を昨年10月に発表した。Javaによる開発を教えるものだが、従来の文法中心・座学中心の研修とは異なり、実際に手を動かしてクラウドサービスを開発するハンズオンが研修の中心。チケットとGitを使い、ビルドパイプラインでDockerコンテナ上の環境へのデプロイまで行うなど、今時の開発環境を前提に学んでいく。

カサレアル「しっかり実践 新人研修」で使用される開発環境(出典:カサレアル「しっかり実践 新人研修」Webページ)
カサレアル「しっかり実践 新人研修」で使用される開発環境(出典:カサレアル「しっかり実践 新人研修」Webページ

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著者プロフィール

  • 工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

    出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

  • 市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

    1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学習書と開発者向けWebメディア両方の経験を活かして「資格Zine」を立ち上げ。「IT人材ラボ」はその拡張版となる。

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