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どこにいるのか、データサイエンティスト

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鹿内 学[著]
2018/05/08 06:00

 あらゆる業界でデータ活用の重要性が高まっていることに、もはや言を俟たないでしょう。データ解析でビジネスを加速するスペシャリスト「データサイエンティスト」の需要も大きくなるばかりです。しかし、日本国内ではその資質を備えた人材の育成が全く遅れており、企業が求めても獲得は困難を極めます。さらに、企業側もその受け入れ・活用の実績がなく、組織作りから検討しなければならないのが現状でしょう。本連載は、データサイエンティストの獲得や育成、組織開発に取り組むときに現れる「皆様の疑問」に答えていきます。第1回の今回はデータサイエンティストはどこにいるのか、そもそもデータ活用は本当に必要なのかなどの疑問に答えます。

筆者は、パーソルキャリアでデータサイエンティストの学習支援や採用支援を行う新規事業「Data Ship」の開発に携わっています。その中で、データ活用を推進する企業の方々からの様々な課題や疑問を耳にします。本連載では、データサイエンティストの採用や学習・育成(人材開発)、組織開発に関していただく「疑問」について考えていきたいと思っています。

今回取り上げる疑問はこちらです。

// 質問 //

  • そもそも、うちの会社にデータ活用は必要ですか?
  • データサイエンティストは何ができる人ですか?
  • データサイエンティストはどこにいるのですか?

なお、本文のところどころに トピック というラベルの付いた記述があります。これについては、本稿の最後に説明します。

また、本連載で取り上げてほしいトピックがありましたら、下記ページからお気軽にリクエストをお寄せください。

☞「データサイエンティストの人材・組織開発フォーラム」で扱ってほしいトピック 募集ページ

そもそも、うちの会社にデータ活用は必要ですか?

多くの企業で、データ活用が大きな効果をもたらしています。企業においてデータ活用がもたらす2つの大きな効果は、主に次の2つです。

理由1:データによる利益率の向上

効率化のためにデータを活用することは、すでに多くの企業で必須のこととなりました。データ活用による業務改善や自動化(プロセスイノベーション)からコスト削減が図られ、利益率が上がりました。

この点に関しては、すでに多くの事例があります。うまく実行ができさえすれば、データ活用が有意義であることは間違いありません。もし、社内資料を作るために事例が必要であれば、「ビッグデータ 事例」「AI 事例」で検索してみてください。たくさんの事例が公開されています。既存事業で効果が見込めることが、御社でもデータ活用が必要な1つ目の理由です。

今日において、論点は「データ活用するか/しないか」ではなく、「いかにうまく実行するか」なのです。

理由2:データによる価値創出

現在進行中の第4次産業革命[1]で起こっていることの1つに、モノ売りの「サービス化」が挙げられます。これまで、購入された後にモノの機能を改善することはできませんでした。しかし、モノが提供する機能がサービス化されると、購入されたモノからデータを取得し、そのデータにより提供するサービス(機能)を改善できるようになります。これより、サービスがもっと使われるようになるという好循環(正の循環)が期待されます。サービスの利用量が増えれば、売上を大きくする方法はいろいろと考えられます。

今の日本においては、このようなデータ活用によって売上が増えるような価値の創出(サービスイノベーション)が求められています。経済環境や技術革新が大きい中では、前述のプロセスイノベーション以上に、このサービスイノベーションが重要でしょう。これが、データ活用が必要な2つ目の理由です。その点では、データサイエンティスト(職務は後述)が増えることを願っています。

データによる圧倒的な先行優位性

少し乱暴にいえば、この10〜15年はデータの種類と数が多い企業ほど、データから新しい技術を生み出してきました。データによってサービスを改善できますし、また、データによってサービス改善の土台になる技術も発展したともいえます。

データを起点にサービス改善と技術発展の2つが掛け合わされ、その結果、データをさらにたくさん取得できるようになる。このような理想的な好循環をビジネスの中に作ることができれば、事業は指数的に加速していきます。先行優位性は非常に高く、結果的に寡占的な状況になるのは、IT業界を見れば一目瞭然です。

とにもかくにも、そうしたデータで動かす事業(データビジネス)を一刻も早く、間に合うなら一番に始めること[2]。今後、あらゆる業界で、この動きに乗り遅れた企業が淘汰されてしまうのではないでしょうか。3年後、ゆでガエルになっていて淘汰されていたことにも気づかずいたのでは悲しい状況です。世界経済の状況から考えれば中国が優勢で、米国がかろうじて対抗でき、その他の国や地域は総じて劣勢にあるわけですが(図1)、日本企業も楽しみながら、何とかもがき続ける中で光明を見つけるしかありません。

図1:世界に占めるGDPの割合。2013年にはすでに中国が米国を抜いた
図1:世界に占めるGDPの割合。2013年にはすでに中国が米国を抜いた
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サービス業から遠いところにある第一次産業も、データ活用がますます必要な状況になってきています。農作業のロボット化も進んでいますし、漁船はセンサーをたくさん積んでいます。6次産業化(生産だけでなく、食品加工・流通販売まで行う経営形態)という言葉が生まれているように、データ活用は重要な役割を担うはずです。

[1]: これまでの3度の産業革命に続く4度目の産業革命を掲げ、2011年にドイツでは国家的先着プロジェクトとしてインダストリー4.0が謳われました。その中では、IoT(Internet of Things)とAIによる製造業の革新がいわれています。IoTにより様々なモノがインターネットにつながれ、様々な情報がデータ化され、そのデータをデータサイエンティストやAIが解析して、自律的、分散的にサービス提供される社会が期待されています。

[2]: 中国企業は例外です。一般に、自由競争によってデータも競合企業で分配されてしまいますが、中国企業だけは特殊な状況にあります。13億人を超える人口を抱え、国内だけでも多くのデータが蓄積でき、国内企業や中国政府が保有します。データの多寡が技術やサービスに影響する中で、これは大きなアドバンテージです。また、データを活かす人材として、第一線で活躍する中国の研究者がいることも見逃せません。現在、情報科学では中国の論文数は世界一を誇ります。

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著者プロフィール

  • 鹿内 学(シカウチ マナブ)

    博士(理学)https://researchmap.jp/shika
    大学院等の研究機関で10年ほど脳活動画像データなど、生体データの計測・分析をおこなう。ビジネスサイドでもピープルアナリティクスの実務に携わる。ヒト個人の脳組織から、人の集団である企業組織に関心を変えながらも、一貫して、ヒトにまつわるデータにかかわる。現在、パーソルキャリアの新規事業開発部署であるInnovation Lab.にて、データビジネスの事業開発にとりくむ。社内人事や新規サービスMIIDAS(ミイダス)のデータ活用に関わる人材・組織開発のサポートもおこなっている。情報量規準が好き、サッカー好き、漫画好き。

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