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「顧客不在の壁」は事前期待の的を見定めて乗り越える

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2019/02/18 06:00

 昨今、IT企業の都合を押し付けるだけのサービス開発や事業展開が目立ちます。社内では、顧客にいかにして売り付けるか、いかにして囲い込むかばかりが議論されているのが実情です。ニーズという言葉は使っているものの、IT企業にとって都合の良いニーズや顧客しか捉えておらず、顧客を主語にした議論ができていません。これが「顧客不在の壁」です。サービスはお客様と一緒につくるものであるにもかかわらず、顧客不在ではITサービス事業がうまくいかないのは当然だと言えます。今回はこの「顧客不在の壁」を乗り越えるポイントを取り上げます。

サービス提供では「何をすべきか」は二の次

 IT企業で「サービスとは何か」と聞いてみると、答えに困ってしまう方が少なくありません。はじめに、サービスの本質を理解することは、ITサービス事業の変革に欠かせません。

 いったい“サービス”とは何なのか? その定義は次の通りです。

人や構造物が発揮する機能で、お客様の事前期待に適合するものをサービスという

 この定義で最も大切なのは、「事前期待に適合するものをサービスという」のところです。いくら我々がお客様のために良かれと思ってしたことであっても、お客様の「事前期待」に合っていなければ、サービスとはいえません。それはもはや、余計なお世話や無意味行為、迷惑行為です。「事前期待」をつかまなければ、サービスを提供することすらできないのです。

 ちなみに、顧客満足の定義からも事前期待をとらえることの重要性は見えてきます。

 「顧客満足は、お客様の事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる」。これが顧客満足の定義です。もし事前期待よりも実績評価が小さいとガッカリされてお客様を失うことになります。また、事前期待と実績評価がほぼイコールだと、期待に応えてはいるものの、印象が薄いので競合他社に乗り換えられてしまう可能性が高いといえます。

 このようにサービスや顧客満足の定義から、サービスの提供においては「事前期待」を把握することが何より大切だと分かります。言われてみれば当たり前でイメージ通りだという方も多いと思います。しかし実はこの定義から、これまでの取り組みが少し筋違いだったと気づくことができます。

 サービスや顧客満足の議論のほとんどは、「何をすべきか」にしかフォーカスできていません。どんな機能やメニューを開発すべきか。何をしたら顧客満足が高まるのかの議論の終始する。これではうまくいくはずがありません。何をすべきか打ち手を考える前に、「どういう事前期待に応えるべきか」を議論すべきです。どんな事前期待に応えられるサービスを開発すべきか。どんな事前期待に応えたら顧客満足は向上するのか。事前期待の的を見定めるのです。

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著者プロフィール

  • 松井 拓己(マツイ タクミ)

    松井サービスコンサルティング 代表(サービスサイエンティスト)
    1981年、岐阜県生まれ。サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。数少ないサービスの専門家として、メディア取材も受けている。製造業の事業開発プロジェクトリーダー、平均62歳170名が集うコンサルティング会社の副社長を経て、現職。
    主な著書『日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~

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