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ピープルアナリティクスはイシュードリブンで始めよ! 課題解決への仮説づくりに悩んだらまずデータを可視化

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2020/03/03 06:00

 組織や社員に関するデータを様々な人事業務の意思決定に活かすピープルアナリティクス。実務に役立てるにはどうしたらいいのか。研究と実務の両方で、ピープルアナリティクスに関わってきた株式会社シンギュレイト 代表の鹿内学氏が最前線にいる有識者を訪ね、これからピープルアナリティクスに取り組もうとする人事に向けて、有益な知見を共有します。第1回となる今回は、HRおよび教育分野に特化したデータ分析とデータサイエンティスト育成を専門的に手がける株式会社Rejoui(リジョウイ)の代表取締役 菅由紀子氏をゲストに迎えました。

未経験からデータ分析の専門会社に転職、そして起業

鹿内学氏(以下、鹿内):最初にRejouiの会社紹介からお願いできますか。

菅由紀子氏(以下、菅):Rejouiのビジネスは、ピープルアナリティクスとアダプティブラーニングの2つを柱としています。アダプティブラーニングは聞き慣れない言葉かもしれませんが、学習者一人ひとりの習熟度に応じて学習課題をパーソナライズして提供する学習方法のことです。

 アダプティブラーニングに取り組もうと思ったきっかけは、集合学習の場で退屈そうにしている人たちが多いことに問題意識を感じたからです。この状況を解決するため、各人が学ぶべきことをサジェストする汎用的なアルゴリズムの研究を続けています。

 多くの人にとって、会社は人生のほとんどを過ごす場所です。その会社という組織の中で何が起きているかを人の観点から理解するという点で、アダプティブラーニングはピープルアナリティクスとも相互に関連しています。

菅 由紀子氏
菅 由紀子(かん ゆきこ)氏
株式会社Rejoui 代表取締役。
サイバーエージェントにてネットリサーチ事業の立ち上げ、ALBERTにてデータアナリストとして企業の顧客行動分析、CRM構築コンサルティングを経験。2016年9月にRejoui創立。企業の人事データ分析による組織開発・人材パフォーマンス向上を支援。データサイエンティスト協会スキル定義委員、関西学院大学大学院ビジネススクールの非常勤講師としても活躍中。

鹿内:大学時代は統計を学んでいたのですか。

:いいえ、全く。経済学専攻だったので数学はともかく、プログラミングは勉強していません。データ分析に関わるきっかけは、サイバーエージェント在籍時に担当したマーケティングリサーチです。メディアの会員を対象にアンケートを実施し、その分析結果を広告主に提供するサービスの立ち上げに関わり、このときに初めて多変量解析と統計学を勉強しました。

 当時は周りに分析ができる人が1人もおらず、そのサービスのパートナーだったALBERT[1]の前身の会社が主催した勉強会に参加して学びました。勉強する前はとっつきにくいと思っていましたが、取り組んでみるとすごく面白くて、最終的にはALBERTに転職してしまいました。

鹿内 学氏
鹿内 学(しかうち まなぶ)氏
株式会社シンギュレイト 代表。
博士(理学)。株式会社シンギュレイト 代表。働く中でのコミュニケーション・データから関係性に注目した次世代ピープルアナリティクスにとりくむ。代表を務めるシンギュレイトでは1 on 1や会議で利用できる可視化ツールを提供中。働く組織の科学と実用をめざす。情報量規準が好き、サッカー好き、漫画好き。

鹿内:分析の会社としては珍しく、Rejouiの社員には女性が多いと聞いています。

:意図したわけではありませんが2020年2月現在、100%女性です。起業してから気づいたのが、女性がデータサイエンスを学ぼうとするときには3つの障壁があることです。

 第一に時間的制約。学びたくても家事や育児で忙しく、学習時間を捻出できないんですね。第二が経済的制約。今は多くの事業者が講座を開いていますが、概して費用が高い。また、実際に受講できるかどうかは第一の時間的制約も関係します。最後に心理的制約。勉強会に参加すると、「紅一点」になりがちで、居心地が良くないと思う女性もいるかもしれません。理系のバックグラウンドがないと始めづらいというのもあります。

 私自身は学びたいと思ったとき、これらの障壁を感じることはありませんでしたが、女性のキャリア相談に乗っているうちにいつの間にか女性社員が増えました。仮説を立てるときにはチームに多様性があることがプラスに働くことが多く、女性が多いのは良いことだと考えています。

鹿内:人事は比較的、女性も多い部署ですし、もっと多くの女性が分析に挑戦できるとよいですね。菅さんは講座も主催しているそうですが、どんな内容を学ぶのでしょうか。

:2019年に弊社で実施したのが分析の4か月の入門講座です。概要は1コマ90分の講義と30分のグループワークを隔週で8回。実務課題とデータを渡し、データ分析チームの一員になった設定で課題に取り組んでもらいました。

 参加者の8割が人事の人たちで、10人程度。講師の私がデータサイエンティストに必要なスキルセットを説明し、役割分担はそれぞれのチームに任せ、課題を進めてもらいました。3~4人ぐらいのチームですが、自然にビジネスサイド、モデリング、データ処理に分かれましたよ。

鹿内:なるほど、講習ではチームビルディングも学べるわけですね。

[1]: ビッグデータアナリティクス領域でデータソリューション事業を展開する企業。

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著者プロフィール

  • 鹿内 学(シカウチ マナブ)

    博士(理学)https://researchmap.jp/shika
    株式会社シンギュレイト代表。京都大学などの研究機関で10年ほど脳活動画像データ、生体データの計測・分析をおこなう基礎研究に従事。現在、働く中でのコミュニケーション・データから関係性に注目した次世代ピープルアナリティクスの事業化にとりくみ、働く組織の科学と実用をめざす。代表を務めるシンギュレイトでは1 on 1や会議で利用できる可視化ツールを提供中。情報量規準が好き、サッカー好き、漫画好き。

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

    IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

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2020/05/19 13:24 /article/detail/2019
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